窓口で使える薬物動態学!3つのポイントを紹介

おもちぶろぐ徒然日記

窓口業務ですぐ使える薬物動態学

窓口業務は忙しく、とても薬物動態を考える時間がない!!私も同じように思っていました。
実際、きちんとした評価を行うためには、ソフト使ったり添付文書を読み込んで精査することも必要です。

でも、以下の3つのポイントを抑えるだけで、窓口でのアセスメントの幅が広がりました。
簡易的な方法なので、全てに当てはまらないのかもしれません。

でも、ポイントを知ることで「腎機能はどうだろう?」と意識するきっかけにも!!
是非3つだけなのでチャレンジしてみてください。

【ポイントまとめ】

  • 定常状態になるまでの時間を予測しよう。
  • 年齢から、腎機能を予測しよう。
  • 非線形薬物を覚えておこう。

これら薬物動態学の基本は、「菅野 彊 先生」の本がとても分かりやすく参考になると思います。
私は、以下の本から勉強させていただきました。

定常状態になるまでの時間を予測しよう

定常状態になるまでの時間が予測できることで、効果発現や副作用発現の時間が予測することが可能となる。

それに伴い、フォローアップするタイミングや、薬の副作用が薬物によるものかが予測することが可能であると考えられる。

まずは定常状態について学んでいきましょう。

定常状態とは?定常状態になる薬物とならない薬物

一次速度過程をとる薬物の場合、定常状態は以下のように考えられます。
薬物の濃度が徐々に上昇していき、薬物の血中濃度が一定の範囲の間を上下している状態や薬物が入ってくる量と出ていく量が等しい状態。

では、定常状態になる薬物とそうでない薬物を見分けるポイントは何か。
以下の式に当てはまる場合、定常状態になる(徐々に薬物濃度が増えていく)と覚えてください。

薬の投与間隔/消失半減期≦3

例えば、ドネペジル塩酸塩(アリセプト)の場合、
投与間隔 :24時間(1日1回)
消失半減期:T1/2=89.(5㎎単回投与より)

これらのデータを上の式に当てはめると、
24/89.3=0.27 (≦3)となり、定常状態となる薬物と考えることが出来ます。

仮に、ロキソプロフェンNa錠(ロキソニン)の場合、
投与間隔 :8時間(1日3回)
消失半減期:T1/2=1.22

これらのデータを上の式に当てはめると、
8/1.22=6.56 (>3)となり、定常状態とならない薬物と考えることが出来ます。

このことから何がわかるのか、
ドネペジル塩酸塩錠は定常状態になるまで徐々に薬物濃度が上がり、ロキソプロフェンNa錠は単回で効果を示すことがわかります。

次に、定常状態になるまでの時間を予測しましょう。

定常状態になるまでの時間は?

ズバリ、半減期の5倍!!

ドネペジル塩酸塩の場合、
89.3(時間) × 5 =446.5時間(約19日)

このことから何が言えるのか、
例えばフォローアップの電話をかける際に、服用開始から3週間後に電話を入れてみる。

仮に1週間後にフォローアップと考えた場合、1週間後では血中濃度が上がり切っていない。
その後血中上昇に伴う副作用を考えると3週間後を一つの目安とすることが可能と考えられる。

また、薬が消失するまでにかかる時間も、半減期の5倍と考えられる。
ドネペジルの場合、副作用が出て中止になったとしても、薬が消失するのに約3週間ほどかかることになる。

定常状態を踏まえたアセスメントの一例

窓口でよく聞かれるのが、
「どれぐらいから効きますか?」といった質問を受けることが多い。

例えば上記のロキソプロフェン錠の場合、
定常状態にならない薬物=単回(服用するたび)で効果を示すことから、Tmax(0.45時間=約30分)を参考に説明することがある。

そのほかのケースとして、降圧剤(例アムロジピン錠、T1/2≒36)は、36時間 × =180時間(7.5日)、1週間後を目安に血圧をしっかり測ってみて下さいとお話ししている。

その他、副作用の問い合わせがあった際も、副作用の発現率と共に、服用後の薬物動態を参考にするようにしています。

年齢から腎機能を予測しよう

2つ目のポイントとして、腎機能がわからない場合の窓口での対応について記載します。

窓口業務で血液検査の結果を入手することが難しい場合があります。血液検査をいつやっているか、結果をいつもらっているかを正確に把握することが出来ないことがあります。

また、腎機能を予測するためには、Cockcroht-Gault式などを用いてクレアチンんクリアランス(CLCr)を求める必要があり、体重や血清クレアチニン(s-Cr)の情報を入手する必要があります。推定糸球体濾過量でも同様に、s-Crの情報を入手する必要があります。

その問題を解決する方法として、年齢から腎機能を予測する方法があります。
計算式として(正常を100とした場合)、

予想腎機能=100-(年齢-25)(or  =125-年齢)

例えば、年齢が75歳の場合、予想される腎機能は、
100-(75-25)=50

つまり、腎機能が50%程度までに下がっていることがあるということです。
そのため、腎排泄型の薬物が投与されている場合、50%も低下している高齢者だけど大丈夫?
と、いった目線で投薬することが可能です。

あえて125-年齢とせず、100-(年齢ー25)としているのは、
25歳を過ぎると、年1%ずつ腎機能が低下していくと考えられるとのことです。
詳細は、最後に記載している本をご参照ください。

実際の採血結果とどうなんだということですが、年齢よりもとても腎機能がいい方もおられますし、年齢よりも悪い方もおられます。

正確性と意味では、本当に簡易版って感じですが、一つの基準としてあることで、
「腎機能が(年齢よりも)いいのでこのまま維持していけばいいい」、
「(年齢よりも)悪いので、今後注意する必要がある、腎機能を維持するためには。。。」

などの目線をもってアセスメントするようにしています。

採血結果を教えてもらうことが大事だと思いますが、新しく来局された際や、採血結果を見せてくれない方に対して、意識していただければと思います。

非線形薬物を覚えておこう!!

3つ目のポイントは非線形の薬物を覚えておくことです。

動態が嫌いな方、知識がない(私の1年目の頃)方にとって、「非線形の薬物は注意しないといけない」と漠然とした不安があることはないでしょうか。

そのため、薬物動態の学ぶべきポイントがわからないことがあるのかなと。

まず前提として、非線形薬物は多くない!!ということです。
これを知っているだけで気持ちが楽になると思います。

下記サイトに非線形薬物の一覧が記載していますので、参考にしていただければと思います。
非線形薬物一覧参考サイト:https://jstdm.jp/yogo/basic_knowledge.html(日本TDM学会)

最初は、よく出る薬(取り扱っている薬)だけを覚えてください。多くても、10個ほどではないかと思います。

そうなると、それ以外の薬物が線形薬物であり、今回記載しているポイントが応用できます。

まとめ

いかがでしたでしょうか?なるべくすぐ使える知識としたいので、細かい部分がなく不安になられたかもしれません。詳しくは、菅野 彊 先生の動態を学んで頂ければと思います。

薬物動態学は奥が深く、今回のポイントだけではとても全てを対応することはできません。
今回のポイントを覚えて頂くことで、少しでもアセスメントの幅を広げる、窓口での動態の意識を行うことに繋がればうれしいと思います。

参考資料
添付文書より引用:アリセプト錠、ロキソニン錠、ノルバスク
「薬物動態を推理する 55 Question」 著者:菅野
日本TDM学会

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