今回は、先生に採用してもらえる処方提案のポイントを考えてみました。タイトルは在宅・施設編としていますが、外来の窓口業務でも活用できると思います。
「薬局薬剤師が変われば医療が変わる」を信念に、在宅・施設業務に奮闘中です。経験が少ない今だから書ける、感じた事、上手くいった事を伝えれたらと思います。
ポイント1:往診初日を狙ってみよう
施設を担当していると新しい患者(入居者)さんが入ってくるので、担当をお願いしますとお声がけをいただきます。その後、初めて先生が往診される時に処方提案することがあります。
「往診初日に処方提案を実施する」
何故このタイミングなのか。個人的には、一度決定された処方内容は、何か体調変化がない限り見直しがされにくいと感じています。
前の先生から情報提供いただくとはいえ、先生も患者さんのことの多くはわからない状況です。(先生にもよると思いますが)その状況で処方変更することは、先生にとってもチャレンジだと思っています。
施設に入居したばかりで患者さんの環境変化がまずあります。そこでお薬を変更した場合、体調変化が起こった際に何が原因かの判断が難しくなると思います。実際、施設職員でも嫌がられるケースもあるように思います。
だから処方提案をする際は、入念に準備をするようにしています。抜本的に見直すというよりは、「この薬は本当にいるのかな?今の状態ではいらないかもしれないのでは?」という目線でみるようにしています。
いくら入念にといっても、こちらもほとんど初見に近い状態です。なので、先生と一緒に適正処方に努め、先生の勇気づけに繋がる情報提供を心掛けるようにしています。
お会いして間もないということで情報がないということはデメリットでもありますが、変なフィルターなく処方に向き合えるのもこのタイミングと思い意識するようにしています。
ポイント2:患者さんの訴えに耳を傾けよう
患者さんを味方につければ怖いものなし。これはあながち言い過ぎでないのかなと思います。先生も、患者さんの訴えを無下にはできないことが多いように思います。
患者さんの訴えに対し、大きく分けて2つの目線を持つようにすればよいのかなと思います。
1つ目は薬を増やすことで改善する場合、2つ目は薬を減らすことで改善する場合です。
便秘を例に考えてみましょう。
今まで便秘の薬を飲んでいない方が、施設入居後に便秘の訴えをすることがあります。一人の時は食事が不規則だったり食事量が少なかったのが、施設で栄養管理された食事をとることで便秘を訴えることがあります。
入居したことに対する精神的な面から便秘を起こすこともありかもしれません。
こういった際には、薬の追加提案を行うことで、便秘の改善を目的に処方提案を行うことが出来ます。
別の場合として、薬の副作用により便秘症状が出ている可能性です。抗コリン薬や咳止めなどが便秘を起こすことがあることは皆さんよくご存じだと思います。
これらの薬物を服用し便秘を起こしている可能性があれば、これらを減らすことで便秘解消に繋がると処方提案することができます。
この場合に注意すべきは、目的があって薬を飲み始めた背景があるため、中止による主作用の弊害も考慮した上で処方提案することにしています。
過活動膀胱の患者さんに抗コリン薬が出ていた際には、過活動膀胱の程度をあらかじめ確認しておくことで、薬中止にできたケースもありました。
ポイント3:漫然と投与されていないかを考えよう
ビタミン剤、痛み止め、抗アレルギー薬、整腸剤などが漫然と投与されている場合は処方提案のチャンスかもしれません。症状が改善された後も継続して出されている場合もあります。
痛み止めを例にしてみます。
腰痛症状があり整形外科を受診、圧迫骨折が発覚。痛み緩和のため痛み止めが処方された場合です。骨折の程度によると思いますが、数カ月程度で痛みは緩和されるケースが多いように思います。
痛み止めの薬を減らしていく際に、患者さんが減らすのに抵抗することが多々あります。骨折をしていなくても、漫然と痛い箇所が増えているからだと思います。
そんな時は、痛み止めを定期服用から頓服服用に切り替えてもらい様子を見ます。患者さんもいざという時に薬が飲めることが安心材料となり、この提案は受け入れてもらえる気がします。
漫然と投与されているケースでも薬の中止が難しいのは、その薬を飲んでいるから症状が治まっているととらえることが出来るからです。
「痛み止めを飲んでいるから今は痛くない」と思われているといったところでしょうか。なので、頓服の処方を出してもらうことは、患者さんの勇気づけに一役かってもらえます。
往診同行を始めて間もない私だからかよく使う台詞があります。
「この薬なんで飲んでいるんですか?(教えてください)」です。
先生や看護師に聞く時に気を付けていることは、教えてくださいという姿勢を大事にしています。
(特に新参者の私の場合)この部分がないと、今まで治療・ケアしてきている方達に文句をつけている印象を持たれてしまうと考えています。
患者さんの状態を診て処方する権限は先生にあります。そのことを十分に尊重したうえで、不要な薬が少しでも減らせるきっかけづくりと思って聞くようにしています。
最後に言いたいこと
薬剤師として処方提案・変更に関わっていくことはとても大事ですし、今後そのような視点を持った薬剤師の方がたくさん活躍していくと思っています。
釈迦に説法と思いますが、処方提案が最終目的にはなってはいけないということです。
最終目的は、患者さんがより良い状態になり、今後の生活を維持していくことの手助けをすることです。処方提案はあくまでその目的の一つの方法です。
だから、処方提案が通ることが大事でもないし、通らない時に落ち込む必要はないということです。医師にも十分な考えがあっての判断なので、全力で判断したことに対し良いも悪いもないと思います。
私も的外れな質問や提案も多いですが、素直に勉強させてもらう姿勢があれば無下にされることはあまりありません。最低限の礼儀をもって取り組めば一生懸命さは伝わる気がします。
私と同じように処方に関わっていきたいという方の少しでも参考になればと思っています。
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